移植と移植のフォローアップについて

海外ドナーからの造血細胞移植について

この記事は愛媛県立中央病院 血液内科 中瀬浩一先生より寄稿していただきました。

はじめに

最近では少なくなってきた海外ドナーからの造血細胞移植について、少し紹介させていただき、現在でも治療の選択肢になり得るのかどうか、考えてみたいと思います。

海外ドナーからの移植の歴史

20年以上昔、まだハプロ移植(HLA半合致の血縁者からの移植)や臍帯血移植などのHLA不適合での造血細胞移植が一般的でなかった時代には、きょうだいや日本骨髄バンク(JMDP)にHLA適合ドナーがいなければ、造血細胞移植ができない時代がありました。しかし、国内にドナーがいなくても、海外の骨髄バンクにHLA適合ドナーがいた場合、その方は、貴重なドナー候補となっていたわけです。1997年にアメリカと台湾の骨髄バンクとJMDPの提携が開始され、JMDPを介した海外ドナーからの移植が日本で行われるようになりました。2016年末まで、海外ドナーからの移植は187例、うち約6割がアメリカ、約2割が台湾のドナーからの移植です。

海外ドナーからの造血細胞移植は、2000年前後は年間20例程度行われていました。2000年頃のJMDPを介した国内の非血縁者間の移植は年間400~700件であったことを考えると、日本国内で行われる骨髄バンクを介した移植のうち、数%程度は海外ドナーからの移植であった、「海外ドナーからの移植全盛期」が約20年前にあったわけです。

海外ドナーからの移植が減った理由

その後、日本において海外ドナーからの移植件数は減少していきます。減少した一番の理由は、臍帯血移植の普及と思われます。日本でさい帯血バンクを介したさい帯血移植が始まったのは1997年ですが、2003年からさい帯血移植の件数が急激に増加しています(高梨美乃子著 臍帯血移植の現状 日本輸血細胞治療学会誌 第63巻第 6 号のデータより)。海外ドナーからの移植件数は、さい帯血移植件数が増加した2003年以降、年間10例にも満たない件数に減少し、現在に至ります。そのため、若手の造血細胞移植医は「海外ドナーからの移植なんて見たことありません!」という事も珍しくなくなっています。

海外ドナーからの移植の“実力”と、“利点”

私たちは、日本造血細胞移植学会の海外ドナーからの移植ワーキンググループで、海外ドナーから移植をされた日本国内の患者さんについて、いくつか報告を行っています。急性白血病及び骨髄異形成症候群の患者さんへの、JMDPの国内ドナーとからの移植と海外ドナーからの移植成績はほぼ同等で、さい帯血移植との患者さんと海外ドナーからの移植では、海外ドナーからの移植成績が優れるという結果を報告しています(2012年のAsia Pacific Blood and Marrow Transplantation Groupと、2013年の第35回日本造血細胞移植学会で発表)。ただ、結果の解釈には注意が必要で、当時のさい帯血移植は黎明期であり、移植成績が安定していなかった可能性があることも考えられます。

また、海外ドナーからの移植を申し込んでから移植を受けるまでのコーディネート日数の中央値は105日で、国内ドナーからの移植のコーディネート日数の中央値の110日台と遜色ないか、むしろ短い可能性もあります。海外ドナーからの移植は、思ったよりもスピーディーに移植にたどり着ける可能性があることが、我々のワーキンググループの検討で分かりました。ただ、コーディネートの手順が日本国内と海外では違うため、数字だけを単純に比較することはできない事には留意が必要です(2018年の第40回日本造血細胞移植学会総会で発表)。

以上の我々の研究から、海外ドナーからの移植は、移植成績やコーディネート日数を考慮するなら、現在でもドナー選択の際の一つの選択肢になり得ると考えています。

海外ドナーからの移植の“弱点”

しかし、海外ドナーからの造血細胞移植を考える場合、ハードルの一つは患者負担金と思われます。JMDPのホームページによると、2018年4月現在の国内ドナーとのコーディネートの患者負担金は、モデルケースで14万7千円となっています。一方、海外バンクとのコーディネートの際の患者負担金は、アメリカの骨髄バンク(NMDP)のモデルケースで約500万円、韓国で約330万円、中国で約270万円、一番安い台湾でも約200万円となっています。減免規定があるものの、国内ドナーからの移植と比較して、費用負担が大きいのは間違いないなさそうです。

おわりに

血縁の造血細胞移植のドナー候補者がいない場合でも、JMDPあるいはさい帯血バンクにドナー候補がいらっしゃる患者さんの場合には、海外ドナーが候補となる事はあまりないでしょう。しかし、国内でのドナー探しが難しい場合、海外ドナーからの移植は今でも治療の選択肢の一つと私は考えています。海外の骨髄バンクにどの程度ドナー候補者がいるかは、JMDPを介して知ることが出来ますので、もし、ドナー探しでお困りの場合は、主治医の先生に相談してみてはいかがでしょうか?

参考
骨髄バンクでの移植件数

臍帯血移植の現状 日本輸血細胞治療学会誌 第63巻第 6 号

国内および海外ドナーからの移植の患者負担金