血縁ドナーになるということ

「血縁ドナー」とはきょうだいや親子など、患者さんと「血のつながり」があるドナーさんのことです。造血細胞移植では患者さんとドナーのHLA型の一致が重要ですが、親子の間では、通常HLA型が半分しか一致していません。しかし、ご兄弟の間では25%の確率でHLA型がすべて一致するため、患者さんが移植適応となった時点で「ご兄弟はいらっしゃいますか?」と医師から聞かれることも珍しくないでしょう。また、最近では、HLA型が半分だけしか一致していなくても移植を行うことが可能となってきたため、親子や親戚の方がドナーの候補者になり得る場合もありますので、移植施設に尋ねてみるとよいでしょう。

一方で、「血縁ドナー」になるということは、家族の誰かが移植が必要なほどの病気を抱えているということです。家族の誰かが病気になるということは、個人差はあれ様々な影響があります。心配で夜も眠れなかったり(精神的)、不安で食事がとれずやせてしまったり(身体的)、お見舞いのために仕事を休んだり(社会的)といった影響です。「血縁ドナー」はドナーになる以前に患者の家族であり、様々な影響を感じています。

骨髄バンクのドナーと血縁ドナーの大きな違いのひとつは提供するドナーが患者さんを知っていることです。家族が病気という前提があるため、意思決定にはプレッシャーがかかります。血縁ドナーがこのプレッシャーをだれにも相談できずに、抱え込むこともあります。近年、「造血細胞移植コーディネーター」を配置する移植施設が増えており、血縁ドナーの相談の場を設けています。おひとりで悩まずに、相談してみることが大切です。

「提供したい」気持ちと「採取の不安」が葛藤するとことがあると言われています。「患者である家族はもっとつらい思いをしているのに、自分の心配をしている私は悪い」と考える人もいます。しかし、提供したい気持ちと、自分の身体に何かあったらどうしようという気持ちは別のものです。患者さんもドナーさんもどちらも大切な一人の人ですので、どちらも当たり前の感情といえるでしょう。

血縁ドナーのなかには、提供のためにいろいろなことを我慢したり、がんばったりする方がいます。例えば、ドナーになるために避妊をしたり、禁煙や食生活の改善、運動を始めたりすることです。家族のために頑張る事は悪いことではありません。

ご自身が健康的な生活をするためのきかっけとなった場合などもあるでしょう。しかし、どうか無理はしないでください。血縁ドナーさん自身の負担になるほど何かを我慢したり、無理をするほどにがんばったりすることはありません。どうか、ご自身のことも大切にしてください。