新型コロナウイルス感染症 移植を受ける患者さんへの影響

この記事は、東海大学医学部付属病院 看護部 移植コーディネート室 認定造血細胞移植コーディネーターの三枝真理さんに寄稿していただきました。

骨髄バンクドナーさんから無事に提供を受けられる?

全国の病院では新型コロナウイルス感染症患者の受け入れを優先するため入院患者や手術件数を制限するなどの影響を受けており、ドナーさんの採取をこれまでのように受け入れることが困難になる場合があります。

また、ドナーさんにとっても、生活が一変し、病院に行って検査や入院をするのが難しいという状況が発生することもあります。そのため、ドナーが見つからない、移植日がずいぶん先になる、移植(採取)直前にドナーさんが、自分が新型コロナウイルス感染症に罹ったら?など様々不安に思われる患者さんも少なくないのではないでしょうか。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも、移植を待つ患者さんに必要な治療ができるよう関係者は以下のような努力を続けています。

  • ドナーさん:ドナーさんは「患者さんの命がかかっている」と日々、感染予防に努めながら採取の準備を進めてくださっており、患者さんと同じように移植(採取)までの不安と緊張を感じています。
  • 骨髄バンクのコーディネーター:ドナーさんと面談し行動を共にすることの多い骨髄バンクのコーディネーターも「自分が感染させてはいけない」とドナーさん同様に注意深く過ごしています。
  • ドナーを迎える採取病院:院内感染防止のため、細心の注意を払って対策しています。入院前にはP C R検査等で感染症の持ち込みを防いでいる施設も増えてきました。
  • 移植病院:万一の急な移植中止・延期に備えてさい帯血や血縁者H L A不適合ドナー等をバックアップドナーとして検索しています。ドナーさんのP C R検査が直前になる場合やバックアップドナーが準備できない場合にはドナーさんの骨髄を事前に採取し凍結保存してから移植前処置を開始する場合もあります。
  • 移植細胞の搬送担当者:地域をまたいで移動することで感染を蔓延させることのないよう、入念に準備をした上で体調管理を怠らず、当日の搬送に臨みます。また、少なくなっている航空便にも注意を払って迅速・確実な搬送を心がけています。
  • 骨髄バンク:採取病院と移植病院の間の連絡を密にとルコとで双方の状況を把握し、問題を最小にできるよう努めています。
  • さい帯血バンク:バックアップ用のさい帯血申し込みが増えて業務が増加していますが、対応できるように尽力しています。

海外の血縁者ドナーさんから提供を受ける場合

海外の骨髄バンクや海外に住む血縁者からの移植を受ける場合、入国制限や入国後の外出禁止等の理由で移植(採取)できるまでに時間を要することがあります。移植治療は患者さんにとって適切なタイミングを図ることも重要ですので、移植施設の医師や造血細胞移植コーディネーターが、ドナーの在住する地域の情勢を確認しながら手続きを進めていきます。血縁者間移植の場合はドナーさんが来日し採取をすることになりますので、領事館等との連絡や往復の航空便を確保することが必要な場合があります。海外に住む血縁者からの提供を受ける可能性がある患者さんはお早めに主治医へご相談ください。

移植病院の面会制限

新型コロナウイルス感染症への対策として多くの病院が患者さんのご家族の来院・面会を制限しています。移植治療は長期間、クリーンルームという特殊な環境での闘病を余儀なくされます。そのため、ご家族との面会が叶わないことで闘病への不安が一層大きくなる患者さんも多いと思いますが、免疫不全をきたすことになる患者さんの命を守るために不本意ながらも病院がとる対策ですのでどうかご理解ください。

医療スタッフに荷物を預けることできる、長期入院の患者さんに限って短時間の面会ができる、病状説明の席には同席できる等、病院の状況によって取られている対策は異なりますので、入院の際に医療スタッフにお尋ねください。

ご家族との面会ができない闘病になりますが、できることが少ないと胸を痛めているご家族、そして移植の関係スタッフ皆であなたの健康回復を願っています。