移植と食事

造血幹細胞移植では、生着後も白血球の数や機能が回復途上にあるため、非常に感染しやすい状態にあります。長期にわたって感染症に注意が必要になるほか、急性GVHDも乗り越えなければなりません。また、移植を行うための移植病棟で生活するというのは、多少なりとも環境の変化に適応するための時間が必要になります。

入院生活から退院後の生活に至るまで、患者さん自身も治療に参加できるポイントもあります。医療者と一緒に移植を乗り切りましょう。

食事の工夫

入院中は、体の調子に合わせて食事を変更する必要があります。治療に伴い、白血球や好中球の数値が低い場合(白血球1,000/μL以下、好中球500/μL以下)は、加熱食というすべての食材に火を通した食事に変えたりします。

薬との飲み合わせにより、食べることができない場合もあります。

移植の期間には、副作用により食欲がなくなったり、口内炎や吐き気、下痢、味覚障害なども重なり、症状の個人差はありものの、多くの患者さんが食事をとれなくなります。その期間は点滴で栄養を補うことができますが、口から栄養を摂らず、胃や腸を使わないでいると、消化機能が低下してしまいます。

炎症がひどく胃や腸を休ませたほうがいいという場合には、「食事は禁止」となることもあり、その時は焦らずに回復するのを待ちます。しかし、口からの食事がとれないことは、結果的に回復が遅くなることにつながりますので、少しずつでも口から食べることを意識しましょう。

治療中の食事のヒント

  1. 入院中の食事は患者さんの状態に合わせて食事の形態を変更することができます。細かく刻んでほしい、ゼリー状のものが飲み込みやすい、といったものから、食べられるものを中心にするなどの対応ができることもあります。栄養士や看護師、医師に相談してみましょう。
  2. 病院食以外に持ち込める場合もあります。吐き気や口内炎があるときは、シャーベットやゼリー・プリンなどの口当たりの良いものが食べやすいことが多いようです。医師に確認の上、試してみてもよいかもしれません。
  3. 味覚障害で味の感じ方がおかしいときは、調味料を別にして食べるときにかけてみると良いかもしれません。
  4. 唾液があまり出ないときは、とろみのあるものや水分を多く含むもの、汁物が食べやすいです。

退院後の食事のこと

退院してからも、免疫抑制剤が切れるまでの期間は生もの(刺身、すし、生卵、生ハム、火を十分に通していないレアの肉など)やチーズ、生みそなどの発酵食品は避けましょう。

その他、賞味期限の切れたものや、洗っても土やほこりが落ちにくい食材は避けます。

いずれも、患者さんの体調に合わせてとなるので、医師や看護師、あるいは栄養士とよく相談することが大切です。

免疫抑制剤を内服中はグレープフルーツ、スウィーティー、はっさくとその果汁を含む食品、ハーブの一種であるセント・ジョーンズ・ワートは食べてはいけません。

退院後は、社会復帰に向けてしっかり食べて体力をづけることが大切です。一度の食事で量を食べられない場合は、少しずつの量で食事の回数を増やすと良いでしょう。ただし、家族が心配するあまりに、無理に食べさせられてストレスになることもあります。個人差がありますので、焦らずに、自分のペースを保つ工夫も大切です。

移植後の生活のリズムが整い、味覚障害も含め、食事がしっかり食べられるようになるには思った以上に時間がかかることがあります。しかし、少しずつでも回復していくことが多いので、ゆっくりと取り組むようにしましょう。