受けられる(経済的)支援について

日本の医療保険制度では、原則として医療費の1~3割を医療機関に支払う必要があります(自己負担)。しかし、高額の医療を受けた場合は、この自己負担額が経済的負担として大きくのしかかる場合があります。こうした医療費の負担を軽減するために①高額療養費制度、②疾病手当金、③障害年金、④限度額認定証、⑤高額療養費の貸付制度及び社会福祉資金貸付制度、があり⑥特定疾患、⑦小児慢性特定疾患、などの医療費の助成制度があります。また、医療費の自己負担分に対して所得税の確定申告により一部を税金から還付される医療費控除制度もあります。いずれも、当事者もしくは代理人が申請しなければなりません。ここでは、患者さんががん治療を受けた時に利用できる支援制度の一部ご紹介します。(2018年5月時点での情報です)

 高額療養費について

がん治療において、病院窓口での支払い額が高額になるような場合は、高額療養費制度を利用することができます。高額療養費制度では、患者さんが1ヵ月間(1日~月末)に支払いする医療費に上限を定め(自己負担上限額)、その上限を超える部分については負担する必要がありません。

自己負担額の上限額は、年齢と所得状況により変動します。例えば、70歳未満の方の場合は、所得(年収)によって5つの区分があり、それぞれ上限が異なっています。例えば、一般的な所得(年収約370~約770万円)がある方の場合、自己負担限度額は「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」というように計算します。

<69歳以下の方の上限額>
適用区分ひと月の上限額(世帯ごと)
年収約1,160万円~
健保:標報83万円以上
国保:旧ただし書き所得210万~600万円
252,600円+(医療費-842,000)×1%
年収約770万~約1,160万円
健保:標報53万~79万円
国保:旧ただし書き所得600万~901万円
167,400円+(医療費-558,000)×1%
年収約370万~約770万円
健保:標報28万~50万円
国保:旧ただし書き所得210万~600万円
80,100円+(医療費-267,000)×1%
年収約370万~約770万円
健保:標報26万円以下
国保:旧ただし書き所得210万円以下
57,600円
住民税非課税者35,400円
<70歳以上の方の上限額(2017年8月から2018年7月診療分まで)>
適用区分ひと月の上限額
外来(個人ごと)
ひと月の上限額(世帯ごと)
現役並み年収約370万~
標報28万以上
課税所得145万円以上
57,600円80,100円+(医療費-267,000)×1%
一般年収156万~約370万円
標報26万円以下
課税所得145万円未満など
14,000円
(年間上限 144,000円)
57,600円
住民税非課税などII 住民税非課税世帯8,000円24,600円
I 住民税非課税世帯
(年金収入80万円以下など)
15,000円

注 1つの医療機関などでの自己負担(院外処方代を含む)では上限額を超えないときでも、同じ月の別の医療機関などでの自己負担(69歳以下の場合は2万1千円以上であることが必要)を合算することができます。この合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。

自己負担上限額は変更されることがありますので、最新の情報は厚生労働省ウェブサイトでご確認ください。

また、高額療養費制度の事前申請方法など、更に詳しい情報はもっと知ってほしいがんと生活のことウェブサイトをご覧ください。

傷病手当金について

傷病手当金は、サラリーマンや公務員などの公的医療保険の被保険者が、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、被保険者が病気やケガのために会社を休み、給料が受けられない場合や減額された際に支給されます。

傷病手当金を受け取るためには、以下の(1)から(4)まですべての条件を満たしている必要があります。

(1)業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
業務上・通勤中(労災保険の給付対象)や病気とみなされないもの(美容整形など)は支給対象外です。

(2)仕事に就くことができないこと
仕事に就くことができない状態の判定は、療養担当者(医師)の意見等を基に、被保険者の仕事の内容を考慮して判断されます。入院のみならず、自宅療養の期間についても支給対象となります。

(3)労務不能の日が連続して4日以上であること
療養のため仕事を休んだ日から連続して3日間(待期)の後、4日目以降の仕事に就けなかった場合に対して支給されます。待期には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれるため、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。

(4)休業した期間について給与の支払いがないこと
欠勤であっても給与が支払われている間は、傷病手当金は支給されません。ただし、給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます。

傷病手当金が支給される期間は、支給開始した日から最長1年6ヵ月です。これは、1年6ヵ月分支給されるということではなく、1年6ヵ月の間に仕事に復帰した期間があり、その後再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合でも、復帰期間も1年6ヵ月に算入されます。支給開始後1年6ヵ月を超えた場合は、仕事に就くことができない場合であっても、傷病手当金は支給されません。

傷病手当金支給対象期間1年6ヵ月(法定の給付期間)
欠勤8ヵ月就労2ヵ月欠勤8ヵ月
支給不支給支給

※支給額や支給期間は、健康保険組合によっては付加給付として上乗せをしている場合があります。

詳しくは、全国健康保険協会ウェブサイトをご覧ください。

 障害年金について

障害年金とは、病気やけがによる障害のため、日常生活や働くことに支障が出た場合に支給される公的年金制度のひとつです。血液の難病の場合、治療には化学療法と骨髄移植などの造血細胞移植による治療法がありますが、いずれも、治療が長期化したり、薬剤や放射線療法による副作用、GVHD(移植片対宿主病)の影響で障害が残ったり、回復に時間がかかることが少なくありません。このような場合を配慮して作られているのが、障害に関する年金給付制度です。近年、移植後のGVDHの有無及びその程度、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定されるようになりました。

一定の障害の状態にあること、公的年金制度に加入していること、さらには保険料の納付要件を満たしていることなどが申請の条件です。障害認定日は、初診時から1年6ヵ月を経過した日か、その間で疾病が治った(治癒の他に病状が固定する場合を含む)日をいいます。

詳しい説明は、日本年金機構の障害年金「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」血液・造血器疾患による障害ウェブサイトをご覧ください。