インタビュー

骨髄提供は新しい人生の始まりに

2020年4月14日
骨髄バンクドナー(骨髄提供者)
西慶倫さん

ドナーとして骨髄提供、骨髄バンクのタスキをかけてフルマラソンを走る西慶倫さんへお話を伺いました。

今日は骨髄バンクのドナーとなられた西慶倫さんにお話しを伺います。

ドナー登録をしたきっかけを教えてください。

2015年の年末、福岡の実家に帰省したとき、九州がんセンターへ白血病の治療を受けにきていた遠い親戚の子が、年末年始に外泊して3日ほど実家に来ていて、私も一緒に楽しい時間を過ごしました。その後、その子が亡くなったとの話を聞いて、それがきっかけで私も何かできることがないかと、ドナー登録をしました。その時34歳でした。

登録をされたときのご家族の反応は?

すぐに両親に登録したことを知らせました。両親も親戚の子が亡くなったことを目の当たりにしていたので、「それは良いことをしたね」と、とても喜んでくれたのを覚えています。

登録してからドナー候補に選ばれるまで

ドナー登録してから1年くらいは意識していたのですけど、その後は気に留めることはなく過ごしていました。提供依頼の大きな封筒が届いたとは、「やっと来た!」と、すごく嬉しく思いました。

骨髄バンクからの封筒は妻が受け取り、「封筒きたよ!」って。私はそれを見て「これでようやく骨髄の提供ができるかもしれない」と話をしたことを覚えています。その時43歳でした。

両親に報告したら「そうか、やっと来たのだね。亡くなった子も喜ぶだろからがんばって」と言ってくれました。妻は私の気持ちが強いと分かっていたようで、特に何も言わずがんばってという感じでした。

ドナー候補になってから日常生活で気を付けたことは?

激しい運動はなるべく控えるようにとのことでしたので、マラソンの練習は控えました。健康に留意して、暴飲暴食せずに、規則正しい生活をするよう心掛けていました。

依頼の封筒が届いてから実際の骨髄提供までの期間は?

3ヶ月ちょっとです。勤務先では当時の上司に「提供は3ヶ月先なので、それを見据えて業務の調整をして迷惑をかけないようにします。」と話しました。その時すでに会社にはドナーになるための特別休暇がありました。ただ制度はあったのですが、社内の勤怠管理のシステム上使えるようになっていなかったので、上司の協力を得て、実際に使える仕組みにしてもらいました。ドナー提供に関わる通院や入院はすべて、特別休暇を使って提供できました。

提供には3泊4日の入院が必要になるので、職場には業務の進捗を共有しながら仕事をしていました。同僚からは「すごいね」という声がありました。

骨髄提供のために入院したとき、どう思いましたか?

ずっと健康で病院にもかからなかったし、まして入院などしたことがなかったので、病院での生活ってどうなのだろう?というのが気になったところでした。特に不安などは感じませんでした。医療スタッフからは、「すごいですね!」とか「ありがとうございます!」という声を多く聞きました。

採取後に目が覚めたとき、どう思いましたか?

目が覚めて気づいたのは、ちょうど病室に移動しているときでした。「あれ?もう終わっているの?」と思いました。身体の違和感はありませんでした。

採取後のご家族の反応は?

まず、「無事に終わって良かったね」が第一声でした。退院の日はちょうど父親が出張で上京していて、病院に来てくれましたので、お茶を飲みながら報告をしました。白血病で亡くなった子のことを思い出しながら、「いいことをやったね」と言ってくれました。

私は特別なことをした感覚はありません。でもいろんな方々から「すごいね」と言われ、私自身はそうじゃないのだよと思っていました。私みたいな気持ちで提供に臨まれる人がどんどん増えるといいなと思っています。

採取後、体の不調はありましたか?

採取が終った翌日に39度近い高熱が出て、その日だけは辛かったです。あと、骨髄採取でよく言われる『採取後の痛み』ですが、献血で針を抜いたときのような程度の痛みで、長引くこともありませんでした。退院翌日には痛みは引いていて、あとは何も問題なく過ごせました。

提供後、患者さんから手紙は届きましたか?

はい、受け取りました。提供から8か月後くらいでした。経過の報告と、順調に良くなってきているといった内容でした。患者さんはお子さんもいらっしゃる方だそうで、「家族みんなで感謝しています」と書いてありました。それを読んで、改めて提供して良かったと感じました。

患者さんからの手紙に返事を出しましたか?

いいえ、書けなかったのです。どういう言葉を伝えたらいいのだろうと思ってしまって、書けなかったのです。今思うと、私の思いをしっかり書いて伝えてあげれば良かったなと思っています。

もし、提供した患者さんへ会えるとしたら、伝えたいことがありますか?

そうですね。私から骨髄液の提供を受けて元気になられ、新しい命をもらったと思われているかもしれませんが、私も提供したことによって自分の生き方を見直して、提供後に新しい自分になれたような気がしているので、そういうことを伝えたいですね。

骨髄提供後のご自身の変化を、具体的に教えてください。

提供するまでは、ドナー登録の制度や重要性とかって、あまり意識をしていませんでした。今の日本の制度だと骨髄提供は2度までしかできません。私はあと1回しか提供のチャンスはないので、ドナー登録の制度をより広めることで何かできないかと思っています。提供後に参加したマラソン大会で、骨髄バンクのタスキをかけて走っているランナーを見かけました。「これなら私もできる!」と思い、それ以来私も『骨髄バンクにご協力ください!』と書かれた黄色いタスキをかけてマラソン大会に参加しています。

骨髄提供前に控えていたマラソンを、提供後に初めて走ったときのお気持ちは?
結構無謀な挑戦でしたが、提供2週間後にハーフマラソンに出て「あ、走れた!」と思いました。また提供から1ヶ月も経っていないうちにフルマラソンにも参加し、その時に骨髄バンクのタスキをかけたランナーに出会ったのです。すごいめぐり合わせだと感じました。マラソンを走っている間は、自分の身体を意識しながら走っています。骨髄バンクのタスキをかけて走っていると周りのランナーから声をかけてもらったり、沿道で応援している方から「骨髄バンク、がんばれ!」と言われたりして、「一人で走っているのじゃないのだ」と思いながら走っています。とても嬉しいです。ただタスキをかけて走っているだけなのに周りの人に影響を与えられて、そういう活動も意味があると思えます。

マラソンの他に、どんな活動をしていますか?

神奈川県内で骨髄バンクの活動をしている『神奈川骨髄移植を考える会』で、ドナー登録説明員をしています。ドナー登録したいという方に、提供するまでにどんなことがあるのかを具体的に説明をして理解をしてもらうための活動です。登録につながるように必要な情報を正しく伝えます。私は実際に提供しているので、自身の経験も伝え、安心して登録してもらえるようにと活動しています。

START TO BEのサイトをご覧の皆様にメッセージをお願いします。

ドナーの登録者数は全国に50万人いますが、もっと、増やしていかないとなりません。登録するにあたっては、自身や周囲の状況がいろいろあると思います。また骨髄提供は怖いと思っている方も多いかもしれませんが、このSTART TO BEのサイトにある数々のインタビューを通して、提供がどういうものかを理解していただきたいです。また提供した患者さんはどんなふうに健康になっていくのかも知ってもらって、提供のきっかけとしてほしいです。私の場合は遠い親戚というきっかけがありましたが、そうではない方も、START TO BEのサイトを見て、できるだけ自分こととして考えていただき、ドナー登録してほしいです。

 

聞き手:古賀真美