治療後に交際・結婚 不妊や性の悩みは「一人で抱え込まないで」

23歳時、急性リンパ性白血病に罹患した女性(40代)に話を聞きました。

普通に思い描いていた人生が不意に奪われる

化学療法や骨髄移植の前に行う治療の影響で卵巣機能が失われ、不妊になりました。当時、私は23歳。お付き合いをしている人もいない状況でしたが、今後、女性として普通に思い描いていた、「いつか結婚し、子を育てる」という人生が不意に奪われてしまうショックは大きかったです。生かされていることに感謝していましたが、今後、どうしていったらいいのか不安も感じていました。

当時は、骨髄移植がまだあまり行われていなかったころ。それを受けられること自体、ありがたい時代でした。「そんななかで、妊よう性(子供を授かる能力)について悩むのは贅沢なのではないか」と思っていました。

でも、勇気を出して信頼している主治医へ相談すると、しっかりと視線を合わせ、話を聞いてくれたんです。「残念だけど、これは仕方がないことなんだよ」と、気持ちを受け止めてくれました。それが心の支えになりましたね。

それでも、整理しきれない気持ちはありました。友人たちの結婚や出産の場面で、「おめでとう」と言いつつも、内心はつらく感じるときもありました。赤ちゃんのオムツのコマーシャルを見て、泣いていたこともあります。

交際相手に、いつ病気や不妊のことを伝えるか

30代半ばころに、現在の夫と出会いました。しかしそこでも、「いつ病気や不妊のことを伝えるか」で悩みました。白血病の先輩に相談すると、「話してダメだったらそこまで。自分で、言うタイミングだと思ったなら、言った方がいい」とのこと。いろいろなことを考え、悩みましたが、勇気を出して夫に伝えました。夫は、「僕は気にしないよ。2人の人生を楽しもうね」と言ってくれて、うれしかったですね。

ただ、夫の両親がどう思うかの不安はありました。夫が両親に話をし、理解してもらえたのですが、実は、孫を望んでいたとあとになって聞きました。

性交痛の工夫、医療者に相談も

セックスでは、放射線治療の後遺症で腟が萎縮し、カサカサして痛い状態。そんなときは、薬局で購入できる潤滑ゼリーを使っています。夫も、無理にしようとはしません。場合によっては途中で終えたり、スキンシップだけのこともあります。

性交痛については、移植後のリプロダクション外来(生殖についての外来)の先生や、医療者の知人に相談しました。そのほか人生の先輩である女性の友人に、病気の話としてではなく一般的な会話として相談していたこともあります。

性生活は、衣食住の一部です。私は医療者でもあるのですが、情報が得られていない患者さんは多いと感じています。患者さんが相談しやすいように、医療者側から声をかけることがとても大事ですね。

病院で相談しにくい場合は、患者会や相談窓口など、病院外でも話ができる場所はあります。性の悩みは一人で抱え込んでしまいがちですが、自分にとって話しやすいところを見つけてほしい。「医療者に相談して良いこと」「話したいときにサポートしてくれる場所がある」と、伝えられるといいなと思います。

取材/文 木口マリ

このインタビューはキャンサーネットジャパンのがん患者の性生活(セクシュアリティ)~心と体に及ぼす性的側面のサポート~事業の一環で実施いたしました。がんと性に関する情報はキャンサーネットジャパンが運営するウェブサイト「もっと知ってほしいがんと生活のこと」内の「がんと性」をご覧ください。