移植と感染予防

造血幹細胞移植では、生着後も白血球の数や機能が回復途上にあるため、非常に感染しやすい状態にあります。長期にわたって感染症に注意が必要になるほか、急性GVHDも乗り越えなければなりません。また、移植を行うための移植病棟で生活するというのは、多少なりとも環境の変化に適応するための時間が必要になります。

入院生活から退院後の生活に至るまで、患者さん自身も治療に参加できるポイントもあります。医療者と一緒に移植を乗り切りましょう。

 感染予防

移植直後は特に免疫細胞の数や機能が十分でなく、また同種移植ではGVHDの予防・治療のために投与する免疫抑制剤やステロイド剤の影響で免疫力がさらに低下します。

感染症予防のために、感染のない状態であっても、移植前の段階から抗菌薬や抗真菌薬、抗ウイルス薬などを使用することがあります。担当の薬剤師や医師や看護師の説明をよく聞いて、用法・用量を守ることが大切です。

移植後のさまざまな感染を予防するには、患者さん自身のセルフケアも非常に大切になります。移植前から手洗いやうがい、歯磨きを習慣化しておくようにしましょう。

しかしながら、移植前後は身体がつらくて、セルフケアの継続が難しくなることもあります。そのようなときには、無理に一人で行う必要はなく、看護師や家族に手助けをしてもらい、症状がもとに戻れば、これまで通り継続していけばよいでしょう。

手洗い

実は、患者さんの手指は、細菌を体内に運ぶ道具になっています。特に食事やお薬を飲むとき、排泄の前後には石鹸を使って流水で丁寧に洗いましょう。また、普段から速乾性手指消毒薬や病棟などに備え付けてある手指消毒剤などを使用するとよいです。

 入浴・シャワー

入院中、点滴をしていてもシャワーを浴びることができます。できる限り毎日シャワーを浴びるようにしましょう。タオルは毎日清潔なものを使用し、全身の皮膚の状態をよく観察しましょう。皮膚が乾燥している場合は、乾燥したままにしておかないことも大切です。

環境整備

入院中、ベッドの周りにはなるべく物を置かないようにしましょう。身の回りに置いている物を介して、ほこりや細菌などに触れるリスクを予防することが大切です。また、荷物などを床に置かない、床に置いているものをベッドの上に乗せたりしない、床に落ちたものは不潔なものとして扱うようにする、という事もとても大事なことです。

 面会者や家族が気を付けること

面会者の年齢制限などは病院より異なりますので、病院の指示に従いましょう。そして、面会者も患者さんと同様に手洗いや清潔行動を心掛けることが大切です。また、面会をする際には、風邪の症状や流行性疾患(麻疹、おたふくかぜ、水疱瘡、下痢など)や帯状疱疹を発症していないことが基本です。

家族内や学校や会社で感染症の流行がないかも確認しておくことがとても大事です。