インタビュー記事

命を救う献血の向こう側 神奈川県赤十字血液センターを訪ねて3

24時間稼働、血液製剤を医療機関に届ける重責  ~学術情報・供給課~

厳しく温度管理された保管庫には、出庫を待つ血液製剤が並んでいました。献血で集まった血液が血液製剤として製品化されるまでには、製造所で検査後、複数の工程を踏む必要があります。そうして届いた貴重な血液製剤を保管し、医療機関に届けているのが「学術情報・供給課」。取材中も一件の緊急オーダーが。受注から出庫までの連携作業は鮮やかなバトンパスを見ているかのようにスムーズで、血液製剤を積んだ献血運搬車は無事に血液センターを出発していきました。血液が確実に患者さんに届いている事実を。昼夜稼働する血液センターという存在の心強さを、感じてください。

抜群のチームワークで正確かつ迅速に血液製剤を供給

医療機関からの要請に応じて24時間365日、血液製剤を届けるのが供給課の仕事です。定時便の出発は午前と午後に各一回。事故などの緊急手術で大量の輸血が必要になった時は臨時便を出して対応し、深夜であっても絶対に断ることはありません。医療機関は24時間稼働しているため、バックアップするセンター側も24時間体制。医療機関と血液センターは車の両輪と考えています。

医療機関からの発注は電話、ファックス、WEBで届き、一番多いのはファックスによる注文です。午前便は10時、午後便は14時と出発時間が決まっており、特に注文が集中する朝の時間帯はファックスがひっきりなしに届くので職員が対応に追われています。

学術情報・供給課の齊藤聡さん

血液製剤は種類別に決められた温度と方法で管理します。赤血球は2~6℃で冷蔵保管、血漿は-20℃以下で冷凍保管しています。血小板については20~24℃で振とう保管※1しています。これは、バック内の空気循環を行い、ガス交換を促すことでその機能を維持するためです。

血液型別に赤血球が並ぶ冷蔵保管庫

血小板は出庫前に必ずスワリングのチェックを行う※2

出庫作業は、受注票の内容に従って保管庫から血液製剤を取り出し、それを専用の輸送容器に梱包し職員が運転する献血運搬車で受注先の病院に届けます。スピードが求められますが焦りはミスの元。注文通り正確かつ安全に届けることを第一に考えています。そのために2名体制で受注内容をチェックしたり、指差し確認を行ったりと、最大限の注意とチームワークでミスを防止しています。(齊藤聡さん)

※1 保管庫で水平に揺らしながら保管する方法

※2 光にかざしてゆっくり攪拌すると渦巻き状のパターンが見られる現象。血小板の形態が変化するとスワリングが消失し、血小板製剤として十分な輸血効果が得られないことがある。

血液センターはチーム医療の一員。その自覚が責任感を生む

私は48歳で金融業界から日本赤十字社に転職しました。職種は畑違いですが献血とは縁が深く、初めての献血は16歳の時。以来、献血回数は160回を超えていますね。実は大卒で日本赤十字社に就職しようと思いましたが、その時は職員の募集がなくて断念。金融業界を早期退職した際、求人誌でたまたま募集を見付けてピンときました。もう一度、トライしようと。

私を含め学術情報・供給課の職員は、医療機関対血液センターという構図ではなく、血液センターもチーム医療の一員という意識で働いています。患者さんを中心に、医師、看護師、検査技師等がいて、その輪の中に血液センターの職員がいる。学術情報・供給課は医療機関に近い分、患者さんの存在を身近に感じられて、私たちが届ける血液製剤を使ってもらっているという実感がやりがいにつながっています。医療機関に血液製剤を届けた時、病院スタッフから「ありがとう」と言ってもらえるんですね。それは、患者さんに届けてくれて「ありがとう」という思いと同時に、献血者に対する感謝でもあると受け止めています。血液製剤は単なる「製品」ではなく、献血者からお預かりした生きた「細胞」、だから大切に扱わないと。

学術情報・供給課は医療機関に近い位置付けと言いましたが、普段のやりとりは顔の見えない電話やファックスが中心。そんな中、研修でセンター職員が医療機関を訪ねる機会に恵まれました。患者さんのベッドサイドで輸血の現場も見学し、供給課は人対人の仕事であることを再確認するいい機会に。病院のスタッフや患者さんと直接交流することで相手への理解が深まり、大変な状況を慮る気持ちが芽生え、少しでも力になろうと思いを新たにして仕事に望んでいます。(齊藤聡さん)

■血液製剤の受注から出庫までを追跡!

1.医療機関からファックスや電話で注文を受け、受注内容をパソコンに入力。

2.受注ミスがないように発注票と受注票の読み合わせを行う。

3.ホワイトボードの欄は運搬コース別に区切られ、受注先の病院名が書かれたマグネットを該当コース欄に貼っていく。赤のマグネットは赤血球、青は血小板、緑は血漿。

4.血液型別に並ぶ血液製剤を保管庫から出して準備。血液製剤の有効期間は、赤血球が21日間、血小板は4日間、血漿は1年間。有効期限が迫る製剤から使用する。

5.血液製剤バッグのバーコードを読み取りパソコンに登録。どの製剤がどの病院に届けられたのかを明確に。

6.血液製剤を輸送容器に詰めて献血運搬車へ。赤の輸送容器の中身は赤血球製剤。

7.企業や個人から寄贈された車を含め、献血運搬車は24台。緊急時は赤色灯を付けて走行し、訓練を積んだ職員がハンドルを握る。