インタビュー記事

命を救う献血の向こう側 神奈川県赤十字血液センターを訪ねて1

手術や骨髄移植を行う際、欠かせないのが輸血用血液製剤です。それは献血によってまかなわれていますが、血液を安定的に確保し、安全に供給できている当たり前を、誰がどのように支えているかは知られていません。そして、献血で提供した血液に命を救われ、感謝の気持ちを伝えたい輸血患者さんがいることも。そうした事実を広く発信することも血液疾患に携わるStart to Beのミッションと考え、今回県内の献血事業を担う神奈川県赤十字血液センターを訪問。献血と併せて骨髄ドナー登録にも熱心に取り組む職員の方々にスポットを当てると同時に、Start to Beがたすき役となり患者さんから預かったたくさんの「ありがとう」を伝えてきました。

取材・執筆/北林あい、撮影/小北一兵


安定供給の一歩は、確かな献血計画から ~献血推進課~

輸血用血液製剤の供給が間に合わない……。それは絶対にあってはならないこと。献血では需要と供給のバランスを考えて血液を確保する必要があり、そのプランナー役を担うのが「献血推進課」。輸血用血液製剤の安定的な供給を支える献血推進課の仕事とは。また、職員の一人が心動かされた白血病サバイバーとのエピソードなど、体温を持った仕事をする献血推進課の職員の方々にお話をうかがいました。

毎月の献血計画を立て、必要な血液を安定的に確保

献血推進課では、輸血用血液製剤の原料となる血液を十分に確保するために、献血バスの配車スケジュールの決定、協力企業への説明、また献血バスでの受付業務などを行っています。おもな献血場所は献血ルームと献血バスです。献血バスを止めるスペースがない場合はオープン献血という形を取り、お借りした会議室などに採血ベッドと器材を持ち込んで行うことも。献血バスの配車先は、学校、企業、駅前やショッピングモールなどです。街中で献血バスを見かけると思いますが、血液センターの職員が呼び掛けを行う他、町内会やその地域のライオンズクラブの方々にご協力いただくことがあります。地域の方の協力が得られると回覧板などで事前告知をしてもらえるため、ぜひ協力団体のマンパワーをお借りしたいと思っています。

献血バスの配車スケジュールは、当センターが属する関東甲信越ブロックセンターが赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤ごとに需要予測を立てたのち、献血ルームと合わせて必要とされる献血人数に基づいて月単位で計画します。「ぜひうちの会社に来てほしい」という配車オファーを受け付けていますので、日本赤十字社のHPをチェックしてください。(梅﨑和秀さん)

献血推進課の梅﨑和秀さん

私たち職員は、毎日どこかで「献血にご協力ください」と呼び掛けています。本当に血液が必要だから呼び掛けをするわけですが、私が献血ルームの担当だった頃、忙しい足を止めて献血に協力しようと思う人は限られていると感じたことがあります。骨髄ドナー登録もしかり、協力を呼びかける側と協力する側の温度差を埋めて、どうやって献血者、骨髄ドナー登録者を増やすかはセンターが抱える永遠の課題。今もその課題に取り組んでいます。(佐藤邦男さん)

献血推進課の佐藤邦男さん

若い世代を中心に献血リピーターを増やすのも重要なミッション

最近は若い世代の献血者数が減少傾向にあり、一定数を確保するためにリピーターを増やすしかけ作りを行っています。献血ルームの快適性もその一つ。県内に献血ルームは8ヵ所あり、その中にはお子さんが遊べるキッズスペースがあったり、無料のコーヒーや雑誌を用意したり、リラックスして過ごせる環境を整えています。毎日というわけではありませんが、占いやカラーセラピーなどの無料イベントを開催したり、午前中限定でドーナツを提供している献血ルームもあります。

献血に協力したい気持ちはあるけど踏み出せない一番の理由は、「痛み」に対する恐怖感ではないでしょうか。こうした施策をきっかけに「献血に行ってみよう」と思い、初めて献血ルームに来た方が「また来たい」と思うように工夫を凝らしています。(代隆彦さん)

事業推進一部の代隆彦さん

ご紹介したような様々な施策を行っていますが、風邪などで体調を崩しやすい冬から春にかけては、どうしても献血の協力が減ってしまいます。この時期には、若い世代に人気のTVアニメキャラクターや県内のJリーグチームとコラボした献血キャンペーンイベントも開催しています。 (梅﨑和秀さん)

献血者に届けたい。患者さんからの「ありがとう」

この仕事を通して、一人の女の子との印象深い出会いがありました。献血会場でボランティアをしていたその女の子は、輸血を経験した白血病サバイバーで、今度は自分が恩返しをしたくて志願したそう。闘病中、病室の窓から血液製剤を積んだ運搬車両を見て、多くの人に支えられていると感じたことも話してくれました。それを聞いて、献血で集まった血液がちゃんと役立っているんだなと、実感したものです。

私たち職員が献血者の方に感謝をするのは当然ですが、患者さんの中にも見知らぬ命の恩人である献血者に「ありがとう」を言いたい人がいるんです。私たちは患者さんの感謝のメッセージを伝えることも大切な役割であり、それが「私も献血に行こう」というアクションにつながると感じています。白血病を克服した女の子と出会いこの仕事に携わる意義を再確認したと同時に、感謝の輪をつなげていきたいと思いました。(梅﨑和秀さん)

現在、血液内科のある県内2病院にメッセージボックスを設置して輸血を受けた患者さんやそのご家族の声を募集し、集まったメッセージを献血ルームに掲示しています。メッセージはポスターやSNSでもご紹介し、現在掲示しているポスターには、小学校4年生で脳腫瘍になった男の子のお母さんから届いたメッセージが綴られています。10回の輸血のおかげで病状は回復し、退院後、運動会でお母さんと一緒に100mを完走したそうです。ご提供いただいた血液が確実に患者さんの命を救っていることを、これからも伝えていきます。(藤森浩一さん)

輸血患者さんからの「ありがとう」をポスターに

今回アテンドしていただいた事務部の藤森浩一さん

取材にご協力いただいた献血推進課、登録課、事務部の職員の皆さん