治療と生活について

治療と家事や育児のこと

ご自身が治療中のとき、家事や育児をこなすのはとても骨が折れることです。家事、育児のすべてを完璧にこなす必要はありません。そして、あなたひとりで抱え込む必要もありません。

パートナー、親戚、近所の方、病院のソーシャルワーカーや行政スタッフ、そしてお子さん自身も含め、あなたのまわりの方で頼れる方がいればSOSを出してお願いをしていきましょう。

また、倦怠感や吐き気、しびれなどの副作用で辛いときには、まずはその辛さをご家族に伝え、治療前と同じようにはできないことをわかってもらいましょう。食事、掃除、洗濯、育児など、負担になる家事はそれぞれで異なります。今、あなたが抱えている家事をリスト化してご家族に見せ、分担できる家事を割り振るのもよいでしょう。病気をきっかけにして、家事分担が進むご家庭は少なくありません。

子供に自分のがんを伝えること

がんと診断されたとき、子供を持つ親は誰しも自分の不安や悩みの一つとして、子供のことを考えると思います。その中で、「果たして自分の病気を子供に伝えるべきか」また、「伝えるとしても、どう伝えたら良いか」ということで悩む方も多くいます。

がんになった患者の子どもへの病気説明に関する実態調査によると、子供の年齢にもよりますが、87%の方が治療する中で「子供に話した」と回答しています。子供は敏感ですので、親が隠していたとしても、いつもと何かが違うことに気付き、独りで悪い想像を膨らませてしまったり、親が話をしないことで子供はかえって疎外感を覚え、不安な気持ちになることもあります。

海外の調査などでは、一般的に子供に親の病気を説明したほうが、子供の情緒面に良い影響を与えることが既に分かっています。

子供へ伝える際のポイントとして、子供の年齢に応じて絵本や図鑑などを利用してがんという病気を正しく伝え、今までと同じようにできること、そしてできないことも率直に伝えることが重要です。その中で、子供にも手伝ってもらえることを一緒に探すと良いでしょう。

がんになった親を持つ子どもへのサポート情報サイト「ホープツリー」にも伝え方のポイントが詳しく掲載されています。

治療と働くこと

国立がん研究センター「がん登録・統計」によると、日本で2013年に新たに診断されたがん(罹患全国推計値)は862,452例、そのうち15~64歳のいわゆる「働く世代」は約3割の251,009例を占めています。また、医療の進歩とともに、「がん=死」という時代では必ずしもなくなってきた昨今、こうした「働く世代」のがん患者さんが、いかに仕事を辞めずに働き続けるか、という「就労」の問題が注目されるようになってきました。

仕事を続けるということは、がん患者さんにとって単なる「収入」というところを超えて、生きがいであったり、生活の満足度を上げるもの、自分の価値を見出す場所、社会との繋がりといった様々な意味を持ちます。がん種や治療にもよりますが、多くの場合、治療をしながら仕事を続けていくことが可能です。まずは、診断された際に焦って仕事を辞めないことが最も重要となってきます。

血液疾患の治療に伴い、長期間休職をせざるを得ない事もあります。復職にあたっても回復がゆっくりであることから、最初は日数を減らしたり、通勤時間を調整したり、といったことも念頭に置く必要があります。患者さんの中には、長期間休職せざるを得ないことに対して申し訳ないと思うことがあり、自ら退職してしまう方もいらっしゃいます。しかし、職場の中で利用できる制度をよく確認しましょう。職場に産業医がいる場合は、相談されると良いでしょう。

仕事と治療を両立させるためには、体調と治療スケジュール、治療は入院か、外来なのか、また、予想される副作用や治療中の注意点など全てを加味して考える必要があります。ただし、これも自分ひとりで抱え込むことはありません。医療機関の相談支援センターや地域連携室、企業の産業医や就労支援コーディネーターなどに相談しながら自分に合った働き方を考え、職場に伝えていきましょう。

尚、治療で一時的に就業ができない場合は、先の項で述べた傷病手当金を利用することが可能です。

がんと仕事について、国立がん研究センター「がん情報サービス」にQ&A形式でまとめられています。こちらもぜひ参考にしてください。