移植と移植のフォローアップについて

妊孕性について

妊孕性、という言葉を聞いた事がありますか?「なんとなく、字で見れば分かるけど…」「何て読むんだろう?」「それって、がんと関係あるの?」など、様々な方がいらっしゃると思います。そんな方は、是非、この項をお読みください。

まず、「妊孕性」ですが、「にんようせい」と読みます。国語辞典では、「妊娠のしやすさ」と書かれています。「妊娠のしやすさ」とありますが、近年、女性だけではなく、男性も、この「妊孕性」を温存して治療できるかが、特に若い方の間で一つの着目点となっています。

がん治療では、手術や抗がん剤、放射線照射などにより、若い患者さんの妊孕性を失わせてしまう可能性があります。特に造血細胞移植の前処置には大量の抗がん剤や全身放射線照射を用いて行われるため、不可逆的な回復しない性腺機能障害となる可能性が高くなります。このような患者さんの生活の質(QOL)改善のため、がん治療後の妊孕性を温存するための治療法も開発されつつあります。

女性の場合、①卵子凍結、②受精卵凍結、③卵巣組織凍結の3つの選択肢があります。すでにパートナーがいる患者さんは卵子を採取してパートナーの精子と受精させ、受精卵として凍結保存することが可能です。配偶者がいない場合でも、未授精の状態で凍結することが可能です。実際の選択にあたっては、がんの種類、進行の程度、抗がん剤の種類やその開始時期、治療開始時の年齢、配偶者の有無などによって異なります。

採取・保存が可能な施設は限られており、採卵のタイミングも重要です。病気の治療を優先させなければならない場合もあります。病気の告知というショックから間もない時期に、決定しなければならない葛藤もあると思います。しかし、採取できる時期やタイミングも限られますので、主治医や家族、パートナーと相談して決定するようにしましょう。

受精卵凍結 卵子凍結 卵巣組織凍結
対象となる主な疾患(※1) 白血病、乳がん、リンパ腫、消化器がん、婦人科がん、悪性黒色腫、胚細胞腫瘍、脳腫瘍、肉腫など 白血病、乳がん、リンパ腫、消化器がん、婦人科がん、悪性黒色腫、胚細胞腫瘍、脳腫瘍、肉腫など 乳がん、リンパ腫など(自己移植を考慮する場合)
白血病などその他の悪性腫瘍(自己移植を考慮しない場合)
対象年齢(※2) 18~45歳 14~39歳 ~39歳
パートナー 必須でない 必須でない
治療期間 必須でない 必須でない
パートナー 2~4週間 2~4週間 1~2週間
入院期間 日帰り 日帰り 4日間(腹腔鏡下手術)
出産例 日本で年間3万例以上 世界でこれまで6000例以上 世界でこれまで60例以上
妊娠率 受精卵あたり妊娠率
30~40%
卵子あたり妊娠率
4.5~12%
自己移植あたり妊娠率
20~30%
問題点 パートナーが必要 受精卵より不確実 いまだ研究段階
自己移植した卵巣から、がんが再発する可能性がある
費用(※3) 約30~50万円 約25~45万円 約60~70万円

※1 対象となる疾患は、医療機関によって若干異なります。
※2 対象年齢は、医療機関によって異なります。詳しくは各医療機関にお問合せください。
※3 全て私費診療で、費用は概算です。受精卵凍結では、特定不妊治療費助成事業によって15~30万円の助成金が支給される可能性があります。

男性の場合、精巣は抗がん剤や放射線に対する感受性が高い組織ですので、がんの治療による妊孕性低下が予想される挙児希望の男性がん患者は,射精が可能であればできるだけ治療開始前に精子の凍結保存をすべきだと言われています。

日本でも妊孕性温存ガイドラインができ、がん・生殖医療提供体制も整備されつつあります。

妊孕性について、もっと詳しく知りたい方は「小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究」ウェブサイトが参考になります。

ホルモン補充療法

移植後、卵巣機能が低下している女性患者さんは更年期障害や骨粗鬆症などのリスクがあります。特に若い女性患者さんに対しては、予防のためにホルモン補充療法を行う場合がありますので、婦人科専門医を受診することがすすめられています。

卵子保存をしていて将来的に挙児を希望する患者さんも、子宮内膜を良い状態に維持しておくためにホルモン補充療法がすすめられています。