移植治療について

移植の際の副作用・合併症

造血幹細胞移植の副作用・合併症

造血幹細胞移植を受ける患者さんには、さまざまな副作用や合併症が起こります。

病的な骨髄を健康な骨髄に入れ替えるために、大量の抗がん剤や放射線照射による前処置が行われます。前処置に関連して血球減少や粘膜障害が起こります。血球減少は感染症・貧血・出血などを引き起こします。

同種移植では、ドナーの骨髄中に含まれるリンパ球によって引き起こされる「移植片対宿主病(GVHD)」に代表される免疫に関連する合併症があり、場合によっては死につながる合併症となります。GVHDは骨髄移植後およそ100日までに皮膚や肝臓、消化器などに起こる急性GVHDと、自己免疫疾患に似た症状で100日以降に発症する慢性GVHDがあります。

前処置に関連して起こる副作用

通常の抗がん剤(化学療法)と同じく、血球減少・口内炎・脱毛・食欲不振・吐き気・嘔吐・下痢などが起こります。しかし、移植の前の前処置には大量の抗がん剤が使用されるために、副作用はより強く現れます。

吐き気に対しては、吐き気止めのお薬を使うことにより、ある程度はコントロールでき、前処置が終了した数日後には改善するのが一般的です。口内炎などの粘膜障害は痛みが強くなると食事がとりづらくなり、唾液も飲み込めなくなることがあります。予防のためには、口腔内を清潔に保つことが一番です。

頻度は低いですがその他の合併症として、肝臓・腎臓・肺・心臓・中枢神経などの重要な臓器に障害が起こることがあります。使用する薬剤によって、出現しやすい副作用は異なります。

全身放射線照射(TBI)を行う場合は、倦怠感・吐き気・嘔吐・下痢・口の渇き・涙の減少・脱毛・肝障害などが照射期間から終了後しばらく続くことがあります。また、晩期障害として、間質性肺炎、白内障、ホルモン障害、成長遅延、性腺障害、腎障害、二次発がんなどが起こることがあります。

移植片対宿主病(GVHD)

GVHDとはgraft-versus-host diseaseの頭文字をつなげて略した言葉で、日本語では移植片対宿主病と言います。
同種移植後に特有の合併症で、移植されたドナーの細胞(移植片)が患者の細胞(宿主)を攻撃する免疫反応によって引き起こされます。
混同されることがある病態として、拒絶反応がありますが、拒絶反応とは患者の免疫細胞が、ドナー由来の移植片を異物と認識して攻撃することによって起こる合併症で、GVHDとは異なります。

本来、私たちの身体にはTリンパ球によってウイルスなどの異物を認識して排除する仕組みがありますが、骨髄液に混ざってドナーのTリンパ球が患者の体内に入ると、患者自身の細胞を「非自己」、すなわち異物であると認識し、患者の身体を攻撃します。これがGVHDです。

GVHDは強力な免疫抑制剤の開発などにより、ある程度抑えることが可能になっていますが、完全にGVHDの発症を抑えることはできず、コントロールできないケースや重症化すると治療は難しく、命を落とすこともあります。

一方で、GVHDは皮膚や肝臓、腸管などの正常組織だけでなく、がん細胞に対する攻撃力があることが明らかにされ、軽度のGVHDが起こっていたほうが患者さんの予後が良くなることが知られるようになりました。これは、患者さんの体内に残存している腫瘍細胞を異物とみなして攻撃する免疫反応によるもので「移植片対白血病(GVL)効果」と呼びます。

やや専門的な内容になりますが、GVHD全般の詳細については、[造血細胞移植ガイドライン GVHD](http://www.jshct.com/guideline/pdf/2009gvhd.pdf)(日本造血細胞移植学会 編)が参考になります。